Book:『帰郷者』(ベルンハルト・シュリンク)
主人公ペーターが少年の頃に、祖父母が編纂していた小説の断片を見つける。しかし結末は破り去られていた。その小説の描写から、少年は死んだと知らされていた父親についての物語だと理解し、ペーターが青年に成長したときに父親探しを始める。
この小説もまたシュリンクの大ヒット作『朗読者』と同様、ナチスの残した負の財産、心の傷のようなものがテーマになっているのだ。
インターネットでレビューを検索するとおおむね好評のようなのだが、自分には『朗読者』のような明確なテーマがつかめず、読破したものの殆ど内容が残らなかった。それは、現実のペーターの人生だけでなく、小説の断片やホメロスの「オデュッセイア」が劇中劇のように散りばめられており、ストーリーに集中しにくかったからでもある。
またペーターの元恋人(ヴェロニカ)の息子マックスについて全編に所々に出てくるのだが、なぜペーターが実の子でもなく結婚していたわけでもない女性の子供を、数年間同棲していたとはいえ、そこまで気にかけるのか全くわからなかった。しかもマックスと具体的にどんな風に過ごしたのか、どんな会話が交わされたのかほとんど記述がないため、重要なエピソードを読み落としたのだろうかと、読みながらそれが気がかりだった。
また一方、ペーターの現在の恋人バーバラとの出来事は細かく描写されているものの、バーバラに生活感を感じさせないため二人の関係に本当に恋愛感情があるのか微妙だったりした。
ペーターはドイツ在住だが、父親は偽名(もしくは改名した)を使ってアメリカの大学で法学を教えており、父親のゼミ(公開講座のようなものか)に参加することを理由にしてアメリカへ渡る。しかしゼミが開催されることになっているホテルのくだりがまたよくわからない。なぜ無人のホテルなのか? なぜゼミに集った学生たちは暴行されるのか? このことがストーリーに大きな影響を与えているのだろうか? いくつもの疑問符が浮かびながら小説はエンディングを迎えた。











